CONTENTS コンテンツ

おとり広告・誇大広告の横行と麻痺していく消費者

こんにちは。石川県金沢市の総合広告代理店PR ENGINEの沼田です。

今回は先日起こった回転ずし大手「あきんどスシロー」の、うに・かにをメインにした期間限定ニューがおとり広告と認定された話についてです。

広告表現、消費者への真摯な姿勢について改めて考えたいと思います。

おとり広告って?

おとり広告とは、商品を買うことができないにも関わらず、購入できると誤認する恐れがある広告のことを指します。

今回の件では2021年9~12月に全国約600店舗で実施された3つのキャンペーン

「新物!濃厚うに包み」

「とやま鮨し 新物うに 鮨し人流3種盛り」

「冬の味覚!豪華かにづくし」

が、おとり広告に該当します。

9割の店で終日提供できない日が1日以上あったにも関わらず、CMや自社サイトで宣伝を続けていました。

2022年6月9日、消費者庁はこの広告を集客のための「おとり広告」と認定し、景品表示法違反(おとり広告)で再発防止を求める措置命令を出しました。

措置命令を受け、「あきんどスシロー」を傘下に置く「フード&ライフカンパニーズ」は「真摯に受け止め再発防止に努める」とコメントしました。

何故予定通り提供に商品をできなかったのか

公正取引委員会によると、当時からスシローに対し苦情などが上がってきていたそうです。

「店に行ったら今日はなくて週末なら提供できるといわれた」

「テレビCMで宣伝しているのに品切れだったので不満」

「販売されていないならテレビCMはやめるべき」

など、多くの声が寄せられました。

また、具材のうにはキャンペーンの途中で足りなくなる可能性もあると判断したためキャンペーン期間中の一定期間の提供を取りやめることを社内で決定したとのこと。

キャンペーンではいずれも新物うにが好評で、過去の実績から予想数以上の在庫を用意してはいたものの、「予想をはるかに上回るご愛顧をいただき、早期に在庫が不足することが予見される事態となってしまいました」とコメントしています。

11月~のカニキャンペーンは初日から商品提供のできない店舗もあったといいます。

そのような状況にも関わらずホームページや店頭などでの告知を停止することはありませんでした。

公正取引委員会は「シェアが第一位である。この行為が一般消費者に与えた影響は非常に大きなもの」と指摘しています。

おとり広告の横行

今回のスシローの件で一気に広まった「おとり広告」という言葉ですが、横行しており不動産仲介の業界でも見られます。

「駅近!」「相場より安い」など好条件の物件を、実際には賃貸借ができない状態にも関わらず「入居者募集」と偽りネットなどで紹介します。

来店した仲介希望者には「先ほど契約が成立した」として別の物件を進めるのだとか。

このような物件はおとり物件と呼ばれています。

私の友人が最近物件探しをしていたのですが、同じような出来事があったようでこんな身近におとり広告は存在しているものなのだなと感じさせられました。

おとり広告は「また起きる」。その理由とは

スシローへの措置命令が出た翌10日、別のウニ偽装が報じられました。

それは北海道利尻市のふるさと納税の返礼品「利尻産うに」についてです。

協力業者が返礼品のうにの中にロシア産を混ぜていたことを発表しました。

こうした水産物の偽装では中国から輸入したアサリを日本海にばらまいた後「熊本産」として販売していた件も大きな注目を集めました。

おとり広告や産地偽装、水産物業界のこれらの不祥事の根底は「水産資源の不足」にあります。

スシローはうに、かにがおとり広告と指摘されましたが、このキャンペーン時期は2つとも世界的な供給不足で価格が高騰していました。

水産資源は実は“世界中で足りない”状況にあります。

水産資源自体が不足しており、そのことで水揚げ量が減少。日本も輸入に頼っているのが現状です。

こうした資源不足が続くことでおとり広告や産地偽装などの不正がデフォルトになる可能性が懸念されています。

スシロー、SNSでの反応は

現在、スシローの公式Twitterでは固定ツイートで「こども黄皿 三皿相当額無料」と謳っています。

リプ欄には好意的なコメントもあるものの、「お店に黄皿がないんじゃないか」、「おとり広告再びか」、「本当に当たる人いるの?」など疑念の声を寄せる人も多く見受けられます。

麻痺していく消費者

今回のスシローの件もそうですが、先日起こった吉野家の件も一瞬大きな注目と批判の声を集めるのですが、すぐにそのことは話題に上がらなくなっています。

情報化社会で様々な情報が錯綜する現代、注視すべき出来事も一つの小さな情報として流れ忘れ去られていってしまっているのではないか、そのような気がしてなりません。

私も広告に携わる人間として、おとり広告など消費者の誤解を招くような広告は横行してはならないと思っています。注視し深く考えるべき広告の問題に向き合い、消費者に対し真摯であるべきだと考えます。

それと同時に私も消費者の一人でありますのでこのようなおとり広告や産地偽装、そしてその要因となっているものは何なのか(今回の件であれば水産資源の不足)知ろうとする姿勢が大切だと考えさせられました。

情報が氾濫する現代社会で皆さんは消費者に真摯でない広告への感度を持っていますか?大切な情報を取りこぼしてはいませんか?

このような出来事は、改めて自身に問いかける機会になると思います。

少し立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。